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【FP解説】生命保険料控除の対象者を解説!控除を最大限活用するための方法も紹介

関根菜摘(セキネナツミ)

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【FP解説】生命保険料控除の対象者を解説!控除を最大限活用するための方法も紹介

目次

夫が年末調整や確定申告で生命保険料控除を受ける場合、対象者が誰になるのか気になりますよね。夫が自分の分の保険料を控除できるのか、そして妻や子ども、親の生命保険の保険料も支払っていたら、夫の分として、生命保険料控除を使えるのか知りたい人も多数いらっしゃいます。

そこでこの記事では、生命保険料控除の対象者について解説します。生命保険料控除の対象となる保険や控除額、控除額の計算シミュレーションといった基礎も学べる内容です。控除を最大限に活用するための注意点も知ることで節約ができ、趣味やカフェ活を楽しめるでしょう。

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生命保険料控除の対象者は保険料を支払った者

生命保険では契約者が保険料を支払うのが一般的ですが、契約者と保険料負担者が別の人で、保険料負担者が支払ったことを明らかにした場合にはその保険料負担者が控除を使えることになります。

国税庁は「妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除」にて、以下の見解を示しています。

“Aがその保険料を支払ったことを明らかにした場合は、生命保険料控除の対象として差し支えありません ”

出典元:妻名義の生命保険料控除証明書に基づく生命保険料控除|国税庁

Aは契約者の夫を指します。要するに「誰が保険料を支払ったかで控除を適用できるか判断している」とのことです。
保険会社では「契約者=保険料負担者」と考えるのが基本です。一方で国税庁はあくまで「保険料が引き落とされた口座の名義人=保険料負担者」と考え、契約者と保険料負担者が同じである必要はないとしています。

注意点は、生命保険料控除に必要な生命保険料控除証明書は「契約者名義」で発行される点です。契約者名義のままだと、実際の保険料負担者が支払っていることを証明できないため、保険会社に連絡し、保険料負担者(引き落としの口座名義人)で作成してもらえるか確認しましょう。

ケース別|生命保険料控除の対象者は誰?

前述したように、生命保険料控除は「保険料を支払った者」が利用できます。次に夫が妻の分の保険料を支払った場合と、妻が自身の保険料を支払った場合に分けて解説します。

夫が妻の分の保険料を支払った場合

妻が契約者として保険に加入し、その保険料を夫が支払っている場合、夫が自身の年末調整や確定申告で控除を適用できます。理由は、生命保険料控除の対象者は保険料を負担した人となるためです。

具体的には、妻が医療保険に加入し、夫がその医療保険の保険料を払っている場合には、夫が保険料負担者として控除ができます。

これは子どもや親のケースでも同様で、例えば親が契約者として介護保険に加入し、その介護保険料を夫が払っている場合なども当てはまります。

妻が自身の保険料を支払った場合

妻が契約者として保険に加入し、保険料を自分で負担している場合には、夫は自分の分として生命保険料控除を利用できません。

保険料を支払っているのは妻であり、生命保険料控除を使いたければ妻側で年末調整や確定申告を行う必要があります。

例えば妻ががん保険に契約者として入り、妻自身が保険料を支払っているケースなどです。子どもや親でも考え方は同じです。

ただし妻が夫の扶養になっている場合には、年末調整や確定申告をする機会がないため、そもそも妻は生命保険料控除を利用できません。夫が保険料を支払うといった工夫が必要です。

生命保険料控除の対象となる保険は?

生命保険料控除は契約した日によって「新契約」「旧契約」に分かれます。
・新契約...2012年1月1日以降に締結した保険
・旧契約...2011年12月31日以前に締結した保険
生命保険料控除の対象となる保険は、新制度と旧制度で異なります。

以下で、対象の保険を具体的に紹介します。

新制度の場合

新制度の区分は「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金保険料控除」の3つです。それぞれで対象となる保険を表にまとめました。
区分 対象となる保険
新生命保険料控除 定期保険、終身保険、学資保険など
介護医療保険料控除 医療保険、がん保険、介護保険など
新個人年金保険料控除 個人年金保険など
新生命保険料控除の対象となる保険は、生存給付金や死亡保険金などが支払われる保険です。
介護医療保険料控除では、入院・通院給付金などが支払われる商品が対象となります。
個人年金保険料控除では「個人年金保険料税制適格特約」が付加された保険のみが当てはまります。
ただし上記の保険であっても対象外となるケースもあるため、詳しくは後ほど解説します。

旧制度の場合

旧制度では「旧生命保険料控除」「旧個人年金保険料控除」の2つのみです。対象となる商品は以下のとおりです。
区分 対象となる保険
旧生命保険料控除 定期保険、終身保険、学資保険、医療保険、がん保険、介護保険など
旧個人年金保険料控除 個人年金保険など
旧制度では介護医療保険料控除はなく、医療保険や介護保険などは旧生命保険料控除で申告できていました。制度改正後、介護医療分野が独立し、新制度は3区分となっています。

生命保険料控除の控除額は?

生命保険料控除で適用できる控除額は新制度と旧制度で異なります。

年間の支払い保険料は1月1日〜12月31日までの1年間で払い込んだものを指します。

新制度の場合

契約日が2012年1月1日以降の控除額は、表のとおりです。

【所得税】
年間の支払い保険料 控除額
2万円以下 支払い保険料の全額
2万円超〜4万円以下 支払い保険料×1/2+1万円
4万円超〜8万円以下 支払い保険料×1/4+2万円
8万円超 一律4万円
【住民税】
年間の支払い保険料 控除額
1万2,000円以下 支払い保険料の全額
1万2,000円超〜3万2,000円以下 支払い保険料×1/2+6,000円
3万2,000円超〜5万6,000円以下 支払い保険料×1/4+1万4,000円
5万6,000円超 一律2万8,000円
新生命保険料控除・介護医療保険料控除・新個人年金保険料控除それぞれで枠を使う場合、所得税では12万円が上限で、住民税では7万円が上限になります。

出典:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|生命保険文化センター

旧制度の場合

契約日が2011年12月31日以前の控除額は、以下のとおりです。

【所得税】
年間の支払い保険料 控除額
2万5,000円以下 支払い保険料の全額
2万5,000円超〜5万円以下 支払い保険料×1/2+1万2,500円
5万円超〜10万円以下 支払い保険料×1/4+2万5,000円
10万円超 一律5万円
【住民税】
年間の支払い保険料 控除額
1万5,000円以下 支払い保険料の全額
1万5,000円超〜4万円以下 支払い保険料×1/2+7,500円
4万円超〜7万円以下 支払い保険料×1/4+1万7,500円
7万円超 一律3万5,000円
旧生命保険料控除・旧個人年金保険料控除それぞれで枠を使うと、所得税の上限は10万円、住民税の上限は7万円となります。

新制度と旧制度を両方使う際の上限は、所得税で12万円、住民税で7万円です。

出典:税金の負担が軽くなる「生命保険料控除」|生命保険文化センター

生命保険料控除の計算シミュレーション

次に「新制度」「旧制度」「新制度と旧制度の両方」別に、所得税と住民税の控除額をシミュレーションしてみましょう。

新制度の保険に加入している場合

2012年1月1日以降に定期保険と医療保険、個人年金保険に加入したと仮定します。それぞれ年間で、以下の保険料を支払いました。
・定期保険...年間7,000円
・医療保険...年間3万円
・個人年金保険...年間12万円
上記より、所得税の控除額は以下のように計算できます。
・定期保険(新生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・医療保険(介護医療保険料控除)...3万円×1/2+1万円=2万5,000円
・個人年金保険(新個人年金保険料控除)...一律4万円
合計の控除額は、7,000円+2万5,000円+4万円=「7万2,000円」となります。

住民税の控除額は以下のとおりです。
・定期保険(新生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・医療保険(介護医療保険料控除)...3万円×1/2+6,000円=2万1,000円
・個人年金保険(新個人年金保険料控除)...一律2万8,000円
合計の控除額は、7,000円+2万1,000円+2万8,000円=「5万6,000円」となります。

旧制度の保険に加入している場合

次に定期保険と個人年金保険に2011年12月31日以前に加入したとシミュレーションしてみましょう。それぞれの年間保険料は以下のとおりです。
・定期保険...年間7,000円
・個人年金保険...年間12万円
所得税の控除額は以下のように計算できます。
・定期保険(旧生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・個人年金保険(旧個人年金保険料控除)...一律5万円
合計の控除額は、7,000円+5万円=「5万7,000円」です。

そして住民税の控除額は次のように計算します。
・定期保険(旧生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・個人年金保険(旧個人年金保険料控除)...一律3万5,000円
合計の控除額は、7,000円+3万5,000円=「4万2,000円」となります。

新制度・旧制度の両方の保険に加入している場合

2012年1月1日以降、定期保険と医療保険に加入し、さらに2011年12月31日以前に契約した個人年金保険がある場合には、新制度と旧制度の両方の計算式を用いることになります。

それぞれの年間保険料は以下のとおりです。
・定期保険...年間7,000円
・医療保険...年間3万円
・個人年金保険...年間120,000円
所得税の控除額は以下のように計算できます。
・定期保険(新生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・医療保険(介護医療保険料控除)...3万円×1/2+1万円=2万5,000円
・個人年金保険(旧個人年金保険料控除)...一律5万円
合計の控除額は、7,000円+2万5,000円+5万円=「8万2,000円」となります。

そして住民税の控除額は次のように求めましょう。
・定期保険(新生命保険料控除)...支払い保険料の全額7,000円
・医療保険(介護医療保険料控除)...3万円×1/2+6,000円=2万1,000円
・個人年金保険(旧個人年金保険料控除)...一律3万5,000円
合計の控除額は、7,000円+2万1,000円+3万5,000円=「6万3,000円」となります。

生命保険料控除を最大限に活用するために|注意点2つ

生命保険料控除で税金を安くするためには、制度の仕組みについて理解することが大切です。最後に、控除を最大限に活用するための注意点を2つ紹介します。

1.上限に達したら家族分は受けられない

生命保険料控除では本人分ですべての控除額を使い切ったら、たとえ家族分の保険料を支払っていても、使うことはできません。

生命保険料控除では所得税と住民税を節税できますが、節税目的で妻や子ども、親の保険に入りすぎないようにしましょう。生命保険は「必要最低限の保障を受けられるか」に着目して、選ぶことが重要です。

2.生命保険料控除対象外の保険もある

生命保険料控除の対象外となるものは以下のとおりです。
・受取人が事実婚のパートナーや同性のパートナー
・保険期間が5年未満の貯蓄保険
・傷害保険 など
新(旧)生命保険料控除と介護医療保険料控除は、受取人のすべてが契約者または配偶者、その他親族6親等以内の血族と3親等以内の姻族)でなければなりません。

また個人年金保険料控除では以下の条件すべてを満たす必要があります。
・受取人が契約者または配偶者
・受取人と被保険者が同じ
・保険料払込期間が10年以上
・年金受取開始が60歳以降で、受取期間が10年以上(確定年金や有期年金の場合)

まとめ|生命保険料控除でゆとりのある家計を実現しよう

生命保険料控除の対象者は、実際に保険料を支払った人となります。夫に自分の保険料分も忘れずに申告してもらえるよう、年末調整が始まるまでに情報を共有しましょう。

具体的な節約金額を知りたいときには、保険会社のWEBサイトにある「シミュレーション」を利用してみましょう。「生命保険料控除 計算ツール」と調べると、たくさん出てきます。
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執筆:関根菜摘(セキネナツミ)

執筆:関根菜摘(セキネナツミ)

執筆:関根菜摘(セキネナツミ)

駒澤大学法学部政治学科卒業後、大手生命保険会社の営業職を経て、Webライターとして独立。現在は金融・法律メインのライターとして活動している。得意分野は生命保険と相続。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP
https://www.natsumi-sekine.com/

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