円安の今がチャンス?FXと為替変動の仕組みと魅力を解説
円安になるとFXのような外貨への投資が注目されます。しかし、円安・円高といった為替の動きについてよくわからない人も多いでしょう。
この記事では為替レートの変動の仕組みを解説し、円安のときのFXの利益の出し方などについて解説します。
円安とは?
円安の意味
たとえば、1米ドル140円のときに1万4,000円あれば、100米ドルを買えます。その後、円安になって、1米ドル150円になると1万5,000円なければ100米ドルは買えません。同じ日本円で買える米ドルが少なくなるため、その分円の価値が低くなった(円安)といえるのです。
逆に、円高とは外国通貨に対して円の価値が高くなる状態を指します。
円安の覚え方
しかし、「1米ドル100円」であれば、「1米ドル150円」のときより同じ日本円でより多くの米ドルを買えます。つまり、より円の価値が高い状態といえるため、「1米ドル100円」のほうが円高であり、「1米ドル150円」は円安となります。
円安と円高について、誤解してしまう初心者は少なくありません。ドル/円のような通貨ペアの場合、円の数字が大きいほうが円安、円の数字が小さいほど円高と覚えるとよいでしょう。
為替差益とは
以下は、円安によって為替差益が発生する例です。
- 1米ドル140円の時に1万ドルを買う
- その後、1米ドル145円になり、1万ドルを145万円で売る
- 5万円の為替差益が発生
円安は円高と比べて有利?
円安のメリット
1. 外貨建て資産の価値が上がる
円安になると、外貨建て資産の価値が上がります。FXで外貨を買う取引にも、円安が有利です。また、通常は日本の株価が上昇しやすくなります。
2. 輸出企業にとって有利
円安になると、日本の企業が海外で販売する商品が安くなります。そのため、海外での売り上げが伸び、企業の業績が向上します。
3. インバウンド消費が活発化する
円安になると、日本への旅行が外国人にとって割安になります。そのため、日本を訪れる外国人観光客が増え、インバウンド消費が活発化します。
円安のデメリット
1. 円建て資産の価値が下がる
円安になると、円建て資産の価値が相対的に減少します。たとえば、1米ドル100円のときの日本円150万円は1万5,000米ドル相当ですが、1米ドルが150円になると1万米ドル相当になります。
円の資産は額面が減らなくても、円安によって価値が下がっている点に注意が必要です。
2. 外貨建て資産の購入価格が高くなる
円安になると外貨建て資産への投資が活発になりますが、すでに値上がりしている商品は高値で買うことになります。そのため、今後も値上がりする余地はあるかという将来性の見極めが必要です。
人気があるからといって、安易に高値の運用商品を購入しないようにしましょう。
3 輸入物価が上昇する
円安になると同じ金額で買える外貨の量が減るため、輸入品は割高になります。たとえば、1米ドル100円だった商品が1米ドル130円になった場合、100米ドルの商品は1万円から1万3,000円に30%も値上がりするのです。
エネルギー資源や食料など生活必需品の多くが輸入品であるため、家計への負担が大きくなります。
4. 海外旅行が割高になる
円安になると海外旅行では、同じ金額でも買える現地通貨の量が減ります。海外旅行でも現地のモノやサービスが割高になってしまいます。旅行中にお土産を買ったり、レストランで食事をしたりする代金も円高のときより多く支払わなければなりません。
円安になる原因
2国間の金利差
政策金利とは、各国の中央銀行(日本なら日本銀行)が民間の銀行にお金を貸し出す金利です。政策金利が上がると民間銀行の金利も上がるため、高い金利を求めてその国の通貨が買われます。
日本は超低金利が続いており、ほとんどの通貨に比べて日本円は低金利です。一方、米国は2022年3月から高金利政策を採っています。そのために日米の金利差が拡大し、円安米ドル高が進んでいるのです。
景気
景気判断の重要な指標として雇用統計やGDP(国内総生産)、消費者物価指数などがあります。中でも米国の雇用統計は、景気状況を見るうえで最も重要な経済指標といえます。原則として毎月第1金曜日に米国労働省から発表され、特に注目される内容は「失業率」と「非農業部門雇用者数」です。
この結果はFXのレートにも大きく影響するため、忘れずにチェックする習慣をつけましょう。
貿易収支
一方、貿易黒字になると受け取る外貨が増え、外貨を円に換えるために円買いの需要が増えて円高に振れやすくなります。
輸出競争力の高い国は貿易黒字になりやすく、通貨高になる傾向があります。
国の財政
日本では財政赤字のために2023年度末の国債残高は1,000兆円を超えています。円安は低金利だけでなく、このような財政状況も原因といえるでしょう。
その他の例として、ギリシャのようなEUの一部の国の深刻な財政赤字によって、2010年以降にユーロ安が続いたことが挙げられます。
このように、財政状況のよくない国の通貨の価値は下落しやすいと知っておきましょう。
政治情勢
一般的に高金利通貨といわれるトルコリラ、メキシコペソ、南アフリカランドなどは国の政治情勢が不安定になる傾向があり、為替レートの急激な下落に注意が必要です。
市場心理
市場心理とは市場参加者の相場の先行きに対する予測、期待や不安などの状況です。市場が強気の状況を「リスクオン」、弱気の状況を「リスクオフ」といいます。
リスクオンの状況では価格変動の大きな資産が好まれますが、リスクオフになると比較的安全とされる資産に投資対象が移ります。
一般的に日本円は安全な資産と考えられているため、リスクオンでは円安、リスクオフでは円高になりやすい点が特徴です。
FXと外貨預金の違い
以下は、FXと外貨預金の特徴を比較した表です。
FX | 外貨預金 | |
---|---|---|
取引方法 | 証拠金取引 | 現物取引 |
取引時間 | 24時間(土日祝含む) | 銀行の営業時間 |
取引できる通貨 | 主要通貨ペア、新興国通貨など | 主要通貨 |
レバレッジ | 1倍~25倍 | 1倍 |
金利 | スワップポイント | 預金金利 |
取引コスト | スプレッド | 為替手数料 |
為替差益を得る機会 | 円高・円安いずれの場合も | 円安になった場合のみ |
外貨預金は円安でしか為替差益を得られない
反対に1米ドル140円のときに米ドルの外貨預金に預け入れ、1米ドル135円のときに円で引き出すと1米ドルにつき5円減ってしまいます。この為替変動で減った分は為替差損です。
外貨預金は預け入れ時より円高に振れると、為替差損が生じます。為替差損が生じても金利は得られるので一概に損をするとはいえませんが、為替が円高傾向の場合にはあまり有利とはいえません。
FXは円高でも円安でも利益が出る
以下は「円を売って米ドルを買う」、円安になると利益を得られるケースです。
- 1米ドル140円で円を売って米ドルを購入
- その後、1米ドル145円になったところで売却
- 1米ドルにつき5円の利益を得られる
- 1米ドル145円で円を買って米ドルを空売り
- その後、1米ドル140円になったところで買い戻し
- 1米ドルにつき5円の利益を得られる
現在持っていない通貨をあとで買い戻す前提で売ることです。FXの売りポジションは、空売りのことを指します。売りから入った取引の買い注文を「買い戻し」といいます。
まとめ
この機会にFXの基礎知識をしっかり身につけ、少額から取引を実践すると失敗しても大きなダメージになりにくいでしょう。いきなり大きな利益を狙わず、まずはデモトレードから始めてはいかがでしょうか。
松田聡子(マツダサトコ)
松田聡子(マツダサトコ)
明治大学卒業。金融ソフトウェア開発、国内生命保険会社の法人営業を経て、独立系FPとして開業。個人や法人オーナーへのコンサル業務、セミナー講師の他、現役FPの知見を生かした執筆業務を行っている。
保有資格:CFP®・DCアドバイザー・証券外務員二種/群馬FP事務所代表
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